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絶たれる生活路線公共交通のありかた。コミュニティーバス導入とその採算性は?

公共交通のありかた。コミュニティーバス導入とその採算性は?

事業者の経営状態の悪化を理由に廃止されるバス路線が増えています。

廃止される路線の多くが、その地域に住む人々にとって重要な生活路線であり、
地域住民の移動手段の確保のためにコミュニティバス事業を導入する地方自治体も増えています。

はたしてコミュニティバスは本当に地域の人々の足となり、
公共交通機関の新しいスタイルとなり得るのか、
中核都市におけるコミュニティバス運行事業を例に取り、検証してみました。

1、民営路線バスの経営状況について ~ 岡山県バス会社で路線の4割を廃止

今年に入って岡山県を中心にバス事業などを展開する事業者が、バス路線の約4割を廃止する届け出を中国運輸局宛に提出したそうです。廃止申請は、全78路線中赤字となっている31路線で、1日当たり約5,500人に影響が出るといいます。
公表されている情報から1路線の平均運賃収入(1日当り)を推計すると、赤字路線では39,032円、黒字路線では188,794円となり、バスを運行するための人件費や燃料代を考えると、赤字路線では採算の取れない深刻な状態であったと推測されます。
このような厳しい経営状況のバス事業者は多くあり、年平均で1,500kmほど毎年路線が廃止されているようです。

岡山県バス会社 平均運賃収入(一路線1日当たり)

平成28年 地域公共交通に関する最近の動向

2、自治体で運営するコミュニティバスの概要

廃止となる民営のバス路線を重要な生活路線として利用している人もいます。運転免許や自家用車がない高齢者、子供、障害者などの方々にとっては、交通手段が失われて日常生活に支障をきたす問題が発生します。
そういった地域住民の足を確保することを目的として、地方自治体がコミュニティバスを導入する施策が進められています。
コミュニティバスの多くは、路線バスよりも小さなマイクロバスを幹線道路から外れた細い道まで走らせ、きめ細かなサービスを提供しようというもので、利用者の利便性を考えて、運賃は安く抑えられており、100〜200円程度です。

しかしながら、自治体によるコミュニティバス運営は、もともと民間が撤退するほどの赤字路線であるため、かなり困難なものとなるはずです。
さらに民間に比べ低運賃サービスとなるため、自治体による運行費用補填(補助)はかなりの額にのぼるのが一般的となっています。

コミュニティバスの導入状況

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3、多摩26市に見るコミュニティバスの事業状況

多摩26市が発表しているデータからコミュニティバスの収支状況をまとめてみました。
26市中23市がコミュニティバスを導入していますが、下表のように各自治体で利用者数や運行費用にバラつきがあり、収支は国分寺市、町田市を除いて赤字の状態(補助)となっています。
また、利用者1人当りの補助(運行経費-運賃)を見ると、調布市、武蔵野市、小金井市、国分寺市、町田市を除く18市では、おおよそ大きな運行補助を行っています。
町田市が受益者負担で運行経費がまかなわれている現状から、他の市についても補助を下げることが可能と思われます。

多摩26市 コミュニティバスの運行状況

多摩26市が発表しているデータからコミュニティバスの収支状況をまとめてみました。<br />
26市中23市がコミュニティバスを導入していますが、下表のように各自治体で利用者数や運行費用にバラつきがあり、収支は国分寺市、町田市を除いて赤字の状態(補助)となっています。				<br />
また、利用者1人当りの補助(運行経費-運賃)を見ると、調布市、武蔵野市、小金井市、国分寺市、町田市を除く18市では、おおよそ大きな運行補助を行っています。<br />
町田市が受益者負担で運行経費がまかなわれている現状から、他の市についても補助を下げることが可能と思われます。<br />

運行経路やダイヤが決まっているコミュニティバス形態では、乗客がいなくても運行経費がかかります。
いくつかの地域について、片道一便当りの乗車数を推計して乗車率を求めると下表のように、乗車定員の半分以下でバスが運行されているようでした。
ほとんどの路線は、10ヶ所以上のバス停を経由して乗客が乗り降りしていますので、同時に乗車している乗客数は、表の乗車人数より少なくなり、バス乗車率が比較的高い日野市(47%)でさえガラガラの状態でバスが走っていると推測されます。
この現状から、実態に合わせた適切な車両選びや、予約に応じて運行する「デマンド交通」など運行形態の見直しが必要と考えられます。

コミュニティバス5路線の乗車率

運行経路やダイヤが決まっているコミュニティバス形態では、乗客がいなくても運行経費がかかります。<br />
いくつかの地域について、片道一便当りの乗車数を推計して乗車率を求めると下表のように、乗車定員の半分以下でバスが運行されているようでした。<br />
ほとんどの路線は、10ヶ所以上のバス停を経由して乗客が乗り降りしていますので、同時に乗車している乗客数は、表の乗車人数より少なくなり、バス乗車率が比較的高い日野市(47%)でさえガラガラの状態でバスが走っていると推測されます。<br />
この現状から、実態に合わせた適切な車両選びや、予約に応じて運行する「デマンド交通」など運行形態の見直しが必要と考えられます。<br />

4、人口約80万人のある中核都市で利用者満足度調査

多摩26市の事例では補助率や運行効率の観点から見てきましたが、コミュニティバスに対する利用者の満足度がどうなっているかも大事な視点となります。
ある中核都市の運行状況、満足度調査の結果は下表のようでした。

多摩26市のデータと同じように費用や運行回数や、利用者数にバラつきが見られました。

コミュニティバス7線の概況(運賃100円一部割引あり)

路線 延べ 運行回数
(回/年)
延べ 利用者数
(千人/年)
運行頻度 満足度
(100点満点)
総運行費用
(百万円)
運行費用 (利用者一人あたり)
(円)
A1 290 6 53 7.6 1,207
A2 174 4 57 7.9 1,874
A3 174 7 48 6.5 914
A4 294 9 47 5.8 634
A5 388 34 45 14.0 410
A6 62 10 43 9.7 959
A7 244 27 53 29.3 1,066

散布図で、利用者一人当たり総運行費用と運行頻度の満足度を各路線で比較してみました。

各コミュニティバス路線について運行頻度の満足度が高い路線は費用が高くなり、費用が低いと満足度も低いという状況となっています。
各路線につき運行頻度(費用)と満足度の組合せをどう選択するかは地域住民および行政の判断に依存します。
しかし、そもそも各路線の1日運行回数をみると一回未満の運行という極めて低運行状況になっており、利用者満足度も不満状況(43点~57点)になっています。
「極めて低頻度での運行」というコミュニティバスの利用条件が著しく制限されている状況下では、コミュニティバスの目的が達成されているとは言えません。

利用者一人当たり総運行費用と運行頻度の満足度

一方、運行補助の状況を調べてみたところ、次のよう各路線で運行補助にばらつきが見られ、市全体では運賃100円(一部の割引を除く)に対し利用者一人当たり744円の補助となっていました。

コミュニティバス7路線の運行補助

路線 延べ 利用者数
(千人/年)
総運行費用
(百万円)
運行収入
(百万円)
運行補助(利用者一人あたり)
(円)
A1 6 7.6 0.5 1,183
A2 4 7.9 0.4 1,875
A3 7 6.5 0.6 843
A4 9 5.8 0.8 556
A5 34 14.0 3.0 324
A6 10 9.7 0.9 880
A7 27 29.3 2.4 996
合計 97 80.8 8.6 744

5、まとめ

以上の調査結果より、この中核都市でのコミュニティバス運行事業はそもそも運行頻度が極めて低く、利用者総数も人口に比べて極めて低い状況下では、バス事業そのものの目的があいまいとなっています。 一方で運賃100円に対して745円もの補助をしている実態に対し、果たして地域コンセンサスが十分得られているか疑問の結果となっていました。

調査後の顛末
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『「コミュニティバス」は、路線バスとの重複が多く、また、利用状況が低調であることなどから廃止いたしました。
路線バスを利用する人は年々減少しており、路線の維持が難しい状況となっています。市では公共交通の一層の利用促進を図り、維持・確保に努めていきますので、路線バスのご利用をお願いします。』
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とのコミュニティバス廃止が市から発表されました。
それにしても、なぜコミュニティバスを導入したか疑問の残る実態でした・・・

調査・研究データ

  • ECS調査
  • S市住民満足度・生産性調査