Activity 03販売・サービス力をAI化する
- トップページ
- 活動
- 販売・サービス力をAI化する
- トップセールスマンが語る、科学的育成法とは
セールスマンの「経験」より「センス」が売り上げにつながると言われる自動車販売の現場で、
この「センス」を科学的に解明するために、ある実験が行われました。
その名も「対人関係心理実践の実証実験」!
難しそうな言葉ですが、要は「人に何かを働きかける時には、その人の心のボタンを押すとうまくいく」
という心理学理論を使って、この「センス」を解明してみようという実験です。
人のどんな「心のボタン」を押すと、売り上げに結びつくのか? 実験の結果はいかに?
A氏の務める自動車販売会社と協同で、営業現場での対人関係心理実践(心のボタンを押す)の実証実験を行いました。 対人関係心理は10種類の心のボタン(注1)からなっており、それらの押し方と販売台数の関連性について調査・分析を行った上で、実践研修を通じて現場適用を図るという試みです。
まず、全セールスマン500人から選抜された若手セールス中心の30人を対象にお客様への心のボタンアンケート(注2)を実施しました。 アンケートは、セールスの基本動作(接客態度、専門知識等)や心のボタンへの作用状況について100点満点できいたものです。
調査の単純集計結果は、基本動作の評価点は高く(平均79.3点)、心のボタンの評価点は低い(平均71.4点)という、予想に近い平凡なものでした。次に、”何をすると販売台数が伸びるのか”というねらいで、各セールスの販売力(潜在販売台数)と基本動作、心のボタン各項目評価点との関係につき、多変量解析を行いました。
その結果、 「多数性」 (注1)と「類似性」 (注1)の2つの心のボタンが販売台数を大きく左右する要因であると判明しました。
下の2つの散布図(対人関係心理スコア×販売予測台数)で分析結果を表しました。
翌年も対象セールスを215人に拡大して再調査・分析が行われましたが、結果はほぼ一緒でした。
この自動車販売会社は神奈川県にありましたが、以前類似研究をした愛知県の自動車販売会社では異なる結果(「お世辞」の上手い下手が販売台数を大きく左右)が得られました。
※各地域、各販売会社で心のボタンの働き方は異なることを意味するものでした。
分析結果を受け、心のボタンを押すための選抜セールス100人規模の研修がスタートしました。
対人関係心理の基礎知識を学んだ後、グループに分かれて各人の過去の販売成功事例を話し合いながら、どの心のボタンを押したのかを検証しました。大半の参加者が心のボタンで説明できる経験を複数持っていたことが明らかになりました。
販売会社は調査分析結果と合わせて、”多数性”と”類似性”が習得すべき心のボタンと決めました。また、それ以外に各自が得意とする心のボタンの習得も重要と判断しました。
この研修は、「心のボタンの現場実践とそのフィードバック~強味発掘、発揮、定着」というスローガンで3年にわたって実施されました。その成果は3000例から成る心のボタン好事例集(一種の販売マニュアル)にまとめられ、販売会社と各セールスの共有財産となりました。
ここで、いくつかの事例を紹介しておきます。
・子供の成長を考え、ミニバンを検討しているご夫婦(40代後半、子供3才)来店。ご主人は、家族皆で乗れるミニバンが良いと軽く考えていた。しかし奥様は、ミニバンのサイズが大きく、取り回しが大変と心配していた。
・ご自宅、幼稚園の周りのご試乗を提案。
・幼稚園の駐車場に通園のお母様たちが乗っているミニバンが多数とまっているのを見て、「他の人たちがあんなに乗っているなら、私でも大丈夫だわ」と言われる。
・試乗後の商談で、上期販売台数No1のデータをお見せし、当日受注となった。
■このセールスが普段から幼稚園の駐車場にお母様たちのミニバンが多くとまっているのを知っており、上手に誘導したことが話しのポイントとなっています。
・店頭新規のお客様。ご夫婦でカタログをもらいに来店。
・一通りの商品説明後、商談テーブルへご案内。
歳が近そうな印象をもったので、住まい、年令などの類似性ボタンを押す。
・そうしたところ、しばらく会っていなかった小学校の同級生とわかり、お互いに驚き、懐かしく会話がはずむ。
・おかげでテンポよく商談が進み、店頭一発受注となった。
■少し出来過ぎのように思われるかも知れませんが、このような事例は思ったより多くあり類似性を探る努力は、ファーストコンタクトの定石となりました。
・2年前に父(60才)、娘(37才)2人で新規来店。娘さん用の軽自動車の商談だったが車検にするとのことで見送りとなった。今年の9月、近くの駅で娘さんにバッタリ出会う。
・友達と飲みに行くとのことで、私のよく知っているお店を何軒か紹介。その後、紹介した店に行くとのTELが入ったので、その店の店長に連絡しておつまみをプレゼントした。
・翌日、娘さんよりお礼の連絡があり「実は私の父が会社を経営していて、10台ほどある車の保険会社や請求がバラバラで対応に困っている」と相談があった。
・そこでフリート契約を提案し受注となった。
契約の際、出たての電気自動車を見ていただこうと思い乗っていったところ、
社長がでてこられ「いろいろ世話になったから、この電気自動車買うよ」といわれ成約となった
■小さな恩義(おつまみプレゼント)で電気自動車が売れたという返報性が作用した事例です。