Activity 02ライフスタイルAI~ECSによる ライフスタイル自動分析
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温泉好きな日本人が温泉旅館にもとめるものは何なのでしょうか。
温泉旅館の繁栄の要因を探るためにある調査が行われました。
結果は旅館経営者にとって、芳しいものではなかったようです。
しかし、この結果、地域を巻き込んだ新しい経営戦略を生み出すきっかけにもなりそうです。
また、ここでは、近年急増中の外国人観光客を対象にした調査結果も分析しています。
日本の伝統的な温泉文化と顧客の関係について何を考えていかなければならないのでしょうか。
環境庁が発表している平成27年度「温泉利用状況」では、温泉地は3,084ヶ所、宿泊施設は13,108ヶ所、年間の宿泊利用者は1億3千万人になるそうです。
また、JTBが10~80歳男女を対象にした「温泉に関するアンケート調査」によると、 全体の8 割以上の人が1 年間に1 回以上温泉に行くと回答しています。
まさに日本人は、老若男女を問わず温泉が大好きです。
一方、旅館経営者は、高い温泉設備のリニューアルよりも料理や従業員サービスの向上を目指す傾向があるようです。
温泉旅館を繁盛させる要因を考えてみましょう。
温泉旅館の宿泊利用者に対象にアンケート調査を行い、専門的、包括的な消費者心理行動調査を実施しました。合わせて対象旅館の業績を調査して消費者心理行動との関係性の分析を行いました。
立地、部屋、風呂、料理、接遇、料金などの満足度項目と人気・話題・関心度、コスト感覚等の社会的スキーマや旅先・旅館に対する期待度合わせて30項目を測定して得点化
客室数や客室当りの宿泊人員にバラつきがあるため、各旅館の宿泊者数を宿泊可能客数で割った客室稼働率を業績を表わす指標として集計しました。
旅行者は、旅行に対して何に期待をして出かけるのでしょうか?
温泉のにぎわいを示す客室稼働率との関連性を見ていきます。
主要な旅先への期待項目と旅館の稼働率との関係を分析した結果、旅行先地域のご当地グルメやショッピング、史跡などへの期待が高いほど、稼働率が高くなる関係性がみられました。
一方で、宿泊施設の立地や部屋やお風呂、お料理、従業員の対応など、旅館への期待は、稼働率との関連性はみられない結果となりました。
実は、旅行者は、宿泊施設に対する期待ではなく、ご当地に対する期待で旅行に出かけているようです。
次に、旅行に行って何に満足したかを集計した満足度と業績の関連性を見てみると、お風呂の満足度が高まるほど客室利用率働率が高くなる関係にありましたが、お料理の満足度との関連性は見られませんでした。
お料理の評価が高いからと言って旅館のリピートにはつながらないようで、お風呂の満足度が高まるほど、温泉がにぎわうことになるようで、日本人の温泉好き好き文化が色濃く反映されたものと解釈できそうです。
期待・満足度のギャップからまとめてみましょう。
全体平均では期待度と満足度にほぼ差はなく期待通りの結果となっています。
しかし、項目別に見ると得点差のギャップが確認され、とりわけお風呂については、81点の高い期待度に対して満足度が76点となり、大きなギャップが発生しています。
つまり、お風呂CSを高めることが、客室稼働率高めることに繋がります。
近年は、日本の観光事情に大きな変化が起きているようです。2016年には2,403万人の外国人観光客が日本を訪れました。2011年の621万人と比較すると約4倍となり、外国人観光客が急増しています。
昨今、東京都心部で外国人観光客を見かけることは日常のことになりましたが、かつては旅行客を見かけることが少なかった地方や日本人にとってもかなり奥深い場所でさえ、外国人の姿を見かけるようになりました。人数が増えているだけではなく、旅行する場所もかなり広範囲に広がっているようです。
外国人旅行者を獲得に力を入れている温泉地もあり、兵庫県の城崎温泉では、外国人観光客数が5年で36倍増加するなど、外国人観光客ブームに沸いている温泉地もあります。
2010年 | 2011年 | 2012年 | 2013年 | 2014年 | 2015年 | 2016年 |
---|---|---|---|---|---|---|
1,748 | 1,118 | 4,732 | 9,584 | 13,877 | 31,422 | 40,345 |
観光庁の「訪日外国人消費動向調査」における、外国人観光客の日本期待を見てみると、日本食を食べることに期待が集中して、温泉入浴への期待は低い状態でした。
一方、満足度を見てみると、ほとんどの旅行者が温泉に満足している状態となり、外国人の温泉評価は、期待以上の満足度を得ているとなりました。
日本人の満足度とは異なる結果となっています。
おそらく、外国人観光客は浴衣姿で町中を散歩するなど非日常の空間や、ものめずらしい独特の体験から、大きな満足感を得ており、日本人の感じる温泉の満足感とは異なるものと推測されます。
このように、外国人観光客ブームの需要に支えられてくると、旅館経営者は知らずのうちに温泉風呂へ努力をしなくなり、施設投資インセンティブが衰退していくことが懸念されます。
その結果日本のホスピタリティの特徴の1つでもあるお風呂文化が変容していってしまうかも知れません。
改めて、温泉旅館経営者の方々に、”お風呂満足度の向上が稼働率向上につながる”という分析結果をしっかり受け止めて欲しいものです。