Activity 02ライフスタイルAI~ECSによる ライフスタイル自動分析

なぜ、売れないのか? 売れない理由を考える。婦人靴Kの逸話

婦人靴Kの逸話

「なぜ、売れないのか」「どうしたら、売れるのか」。
売り上げが落ち込んだとき、誰もが売り上げ低迷の原因を考えます。

現場の担当者が、価格帯、スタッフ、販売戦略、顧客からのフィードバック、
いろいろな視点から原因を考えても、はっきりした答えが出ない。
では、どうすればいいのでしょうか。

ここではECS調査とその分析によって、どう戦略を立てたか紹介します。
その分析結果を新製品の開発に生かし、ヒットに結びつけたあるメーカーのお話でもあります。

1、売り上げ低迷が物語るもの

以前、百貨店の売場別にECS調査分析を行ったことがありました。有益な結果が多々得られましたが、その中でも興味深かった婦人靴Kの逸話を紹介することにします。 婦人靴のECS調査票と業績分析概要図がA、Bです。

A. 婦人靴ECS調査票

(注) 仮想需要関数を推定するための質問、購買心理と満足度に関する質問からなり、買った人と買わなかった人別に集計できるよう設計されています。

B. 婦人靴(全60ブランド)業績マップ

(注) 各ブランド別に過去の業績は交比率[(売上高×粗利額)の対値]
将来の業績は売上成長率(予測値)

婦人靴Kは、これまでの業績では主力ブランドの1つでしたが、ここ半年ほど低迷が続いていました。今後の売上高の予測を作ってみたのが図Cです。

図C 週次売上時系列解析(婦人靴K)

婦人靴Kは、これまでの業績では主力ブランドの1つでしたが、ここ半年ほど低迷が続いていました。今後の売上高の予測を作ってみたのが図Cです。

ご覧のように売上高週次データを用いた予測では、過去の平均売上100万円/週が56万円/週へと大きく低下するとなりました。(尚、この予測モデルの週次の精度は四半期誤差で5%程度でした。)
これは問題だろうと思い、現場バイヤーに状況を聞いてみました。

・当商品の価格帯が高いので苦戦しています。
・平場セールに押され苦戦しました。
・店長が最近交代した影響もあるようです。
・カジュアル戦略が裏目に出たかもしれません

といった解説(言い訳?)でした。
業績分析より他の主力ブランドの予測結果を見ると、図Dのように高価格帯で伸びるものがあり、バイヤー解説に説得力があるようには見えませんでした。

図D 週次売上時系列解析(他ブランド婦人靴)

ECS調査結果が集計され、婦人靴Kを買った人と買わなかった人で評価がどう異なるかを調べたのが図Eです。

図E 購買者と非購買者の評価

ECS調査結果が集計され、婦人靴Kを買った人と買わなかった人で評価がどう異なるかを調べたのが図Eです。

(注)婦人靴Kの調査に当り、購入者20サンプル、検討はしたが非購入者20サンプル(計40サンプル)回収を予定していましたが、売れ行き不振につき2ヶ月で30サンプル弱となりました。

図F 仮想需要関数の推定結果

仮想需要関数の推定結果は図Fです。

“現行価格を10%程度引下げると、売上高は倍程度に増加する”
ことを物語っています。


以上の分析よりデザインや通気性などを強化した新商品開発
または、価格引下げ戦略(10%程度)が婦人靴Kについては求められるというものでした。

2、本質を知る事で大ヒット商品を生む

分析結果が現実に裏打ちされたのは、1年ほどたってのことでした。

婦人靴Kのメーカーでは、その後、新商品を開発しました。
デザインを一新し、足に優しい、足の健康を保つ、新インナーソールを仕込んだ商品で、ユーザーの人気も高く、新聞社主催のレディス部門の「ベストセラー賞」を受賞したそうです。