Activity 01AI地方自治Ver.1.0への挑戦
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- 蔵書数が多いのに、読みたい本が見つからない!
みなさんは図書館を利用しますか?YESと答える人はごくわずかかもしれません。
YESと答えた人の中でも、「読みたい本が見つからない」などの不満の声も多々聞こえてきます。
そもそも誰のための図書館なのでしょうか。
地方自治体のどこもが「町立図書館」「市立図書館」などを持つ意味はあるのだろうかというところが疑問になってきます。
静岡県立中央図書館の2階閲覧室の床に、数十箇所のひび割れが発見され臨時休館の騒動となったそうです。
ひび割れは、最長約3メートル、最大幅1・4ミリほどで、図書館が保有する本の増加により床に大きな負荷がかかったことが原因とされていますが、安全性を脅かすほどに蔵書を増やし続けるのは、いかがなものかと思われます。
参考 : 静岡県立中央図書館 ウェブサイトより
名古屋市の図書館では、市民への本の貸出実績が年間1,000万冊になるそうです。
同市の人口は、230万人(平成28年3月時点)ですので、市民一人当たりに4~5冊の本を貸し出した計算になります。
貸出の実態を捉えるために統計資料を調べると、市民一人あたりの年間貸出利用回数は40回程度で、1回当りに借りる本は3冊程度となります。
この結果から、実際に本の貸出利用をした市民は、人口の約3~4%となる約8万人と推計されます。実は図書館の貸出利用実態は、「限られた一部の人が頻繁に利用している」と言えるでしょう。
ある政令指定都市の図書館の大規模調査から、蔵書数と貸出冊数の関係を調べてみました。市全体で12館ある図書館の代表例として2館のデータを示してみます。
蔵書数、貸出図書数ともに中央図書館が多く、それぞれの差は、蔵書数で483千冊、貸出図書数で99千冊となりました。
貸出冊数は、蔵書数が多いほど増える傾向に有りますが、蔵書を1冊増やすと貸出数が0.2冊増える計算となります。
しかし、蔵書の効率利用の観点からは、非効率な状態と見えます。
また、名古屋市の例と同様に貸出人数の当市人口に対する割合を調べても約4%と一部の利用者に限られていました。
図書館 | 床面積(㎡) | 蔵書数(万冊) | 貸出人数(万人/年) | 貸出図書数(万冊/年) | 利用回数(回/年) | 貸出図書数(冊/1人) |
---|---|---|---|---|---|---|
中央図書館 | 4,635 | 57 | 15 | 60 | 41 | 3.8 |
A地区図書館 | 2,186 | 9 | 13 | 50 | 43 | 3.9 |
図書館の利用人口や蔵書効率が低いことがわかり、その原因を探るために、利用者の満足度の側面から調査分析をしてみることにしました。
主な項目別に集計した得点は下表のとおりで、「本・雑誌・新聞などの種類や数」が他の項目と比較して満足度得点が特に低い状態となっています。
満足度項目 | 中央図書館 | A地区図書館 |
---|---|---|
本・雑誌・新聞などの種類や数 | 55.5 | 59.6 |
建物、設備、館内の座席の数や居心地 | 56.3 | 74.5 |
本の予約や講演会、児童へのサービスなど | 62.6 | 65.0 |
開館時間・日数 | 65.6 | 70.7 |
図書館までの距離や交通の便 | 69.3 | 78.8 |
本を一度に借りられる冊数や期間 | 71.2 | 75.1 |
職員の応接 | 73.3 | 70.7 |
本の種類の満足度と蔵書との関係性を見ると、蔵書数が多い中央図書館の満足度が低くなるという変な現象がみられました。(ここでは示しませんでしたが、他地区図書館でも同様の傾向となっていました)
これは、蔵書が多くても利用者の満足度は上がらないことを意味しています。
また、全館における過去7年間のタイトル別の貸出回数累計を調べたところ、貸出回数10回以下の本が全体の約6割で、一度も貸し出されていない本が約3割となり、ほとんどの本が貸し出されていない状態にありました。
これらの結果から、多くの市民は図書館の本の種類には不満で、図書館から借りたい本がなく、図書館には有効活用されていない蔵書が大量に存在することが浮かび上がりました。
図書館の役割を、図書館法から解釈すると、図書館は図書や知識・情報を収集・整理・保存して、それらを住民や利用者に提供し、新しい知識・情報を生み出す手助けをしたり、文化活動を活性化したり、地域の教育・学習の場として機能するところとなります。
このような図書館の役割を果たすために、どんな蔵書をどれくらい用意すべきか、行政と市民の間で大きなギャップがありそうです。
各地域で、客観的・科学的データにもとづき議論を深め、より望ましい状態に近づけて欲しいものです。
図書館法(抜粋)
第一条
この法律は、社会教育法(昭和二十四年法律第二百七号)の精神に基き、図書館の設置及び運営に関して必要な事項を定め、その健全な発達を図り、もつて国民の教育と文化の発展に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条
この法律において「図書館」とは、図書、記録その他必要な資料を収集し、整理し、保存して、一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、レクリエーション等に資することを目的とする施設で、地方公共団体、日本赤十字社又は民法(明治二十九年法律第八十九号)第三十四条の法人が設置するもの(学校に附属する図書館又は図書室を除く。)をいう。